川上弘美先生の代表作だと思っています。

センセイの鞄 (文春文庫) (2004/09/03) 川上 弘美 商品詳細を見る

３８歳のツキコさんと７０代のセンセイが、近所の駅前の一杯飲み屋で居合わせて以来、ゆるりとした付き合いを続けるという、超微妙な距離感が読んでいて微笑ましい、大人の恋の物語です。恋というのか愛といのか、今まで読んだことのないようなほんわかしたシチュエーション、そして距離感です。
作者の川上弘美氏は、この主人公の「ツキコさんが一番私に近いタイプ」とどこかの雑誌で言っていました。せつなくなるほど、恋愛下手なツキコさん。高校時代の同級生が登場して、今どきのデートを何度か重ねてもセンセイへの恋情を確信するだけ。いざ突撃しても、センセイにさりげなく交わされて悶々と悩むツキコさん。ツキコさんが作者の投影だと思うと、川上先生にすごく愛着が湧いてしまうのは私だけではないでしょう。
さて、３８歳の女性と７０歳のヤモメの男性の大人のお付き合い、行き着くところはどうなるのでしょうか？　結末はご自分で読んでみてください。短い小説なのでさらっと、後味良く読めると思います。お断りですが、エグイ描写は全くありません。絵本にでもしたいようなゆるり小説です。
ありふれた恋愛小説に飽きてしまった、大人の女性にお奨めの一冊です。