第１５４回芥川賞受賞作です。滝口悠生氏作。

お通夜で集まった人たちが、どのような繋がりなのかわからないというのは、よく見かける光景ですが、そんなお通夜の日常がこの物語のステージです。
この作品では､中学生の頃から､いわゆる｢引きこもり｣になり､高校を卒業すると突然祖父である故人の家の倉庫を改装し､同居を始めた孫と､若い頃から暴力的で､定職に就けず､金遣いが荒く､親戚に金の無心をし､妻とも離婚し､自身も蒸発してしまい残された2人のひ孫が登場します｡
様々な視点からの語り口で､物語は進行していき､たまに未来からの視点があったりと目まぐるしく変わり､正直誰が誰だかよくわからなくなります。丁寧に読まないと現実なのか、非現実の描写なのかよくわからないのですが、もしかしたら作者は、敢えてこのような曖昧さを表現しているのかもしれません。

「島田雅彦」氏も論評していますが、自分の葬式の一部始終を観察できる人は現実的にはいないはずですが、この表現を小説で試みると、こんな作風になるでのしょう。

自分の葬式はこんな感じで、こんな人が集まるのだろうなあ・・・。想像しながら読むと面白しかもしれません。

お薦め度は★★★☆☆（星３つ）です。

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